本文
町原の六面地蔵(まちばらのろくめんじぞう)
小国町指定文化財(彫刻第3号)
昭和57年3月31日
小国町大字町原
共同墓地
町原地区
総高74.2cm
像刻印部の高さ約31cm
六角面の一辺約12cm
町指定文化財「町原の六面地蔵」は、小国駅の南方約2km程の所に位置する町原集落の共同墓地入口に、お堂を建て祀られている。以前は、村内を通る旧越後街道から墓地に至る道路のT字路脇に建てられていたが、道路整備に伴い現在地に移されたものである。
この六面地蔵は、凝灰岩質砂岩に陽刻したもので、構成は下部から順に次のようになっている。荒削りされた礎石の上にこれより一回り小さい蓮台をのせ、その上に、周りに六体の尊像を刻んだ龕部(がんぶ)を乗せ、上部には円形の笠石がかぶせられている。最上部の笠石には、宝珠と請花らしい部分も見受けられるが、風化により請花の詳細ははっきりしない。
大きさは、総高が約74.2cmで、多くが1m以上ある町外の六面地蔵に比べると小ぶりである。
地蔵尊は、いろいろな姿をして、世の中の生きとし生けるものすべて(衆生)の命を救ってくださるありがたい仏であると信じられ、神社や寺の境内、そして墓地、畦道、路地の曲がり角や辻等に建てられているのが見受けられる。延命、子育て、イボとり、商売繁盛、あるいは交通安全等の願いごとを冠した地蔵もある。
すべての衆生は、生きている間に犯した罪や功徳により死後六道の世界(地獄道、餓鬼道、畜生道の三悪趣と修羅道、人間道、天上道の三善趣)が定められているといわれ、地蔵さまは現世だけでなく、これら死後六道の世界にあるものの悩みや苦しみをも救ってくださるありがたい仏だと信じられて来た。六面地蔵もこのような信仰と深い結びつきがあると言われている。
六面に刻まれた各尊像は、長年の風雨や風雪等による風蝕が進み、持物や容姿等の判別は困難となってきている。また、紀年や発願主も不明であるが古い時代形式に属するものであろうと推定されている。
町内では、各所で地蔵尊を目にすることができるが、六面地蔵は町原にしかなく、この一例は、六面地蔵信仰が確かにこの地にあったことを示す貴重な文化財である。