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山の神の烏天狗像(やまのかみのからすてんぐぞう)
小国町指定文化財(彫刻第16号)
昭和60年3月31日
小国町大字玉川(山の神社)
個人
総高27.5cm
像高21.5cm
肩幅15.5cm
羽7cm
玉川は集落内を旧越後街道が通り、藩政時代には宿駅や番所なども置かれたところである。米沢藩にとっては軍事・経済・宗教そして文化等の面で重要な領境の地であった。ここから西方の山道を上り、大蛇伝説で知られる大里峠を越えればその先は越後の国(新潟県関川村)畑(はた)である。
町指定文化財「山の神の烏天狗像」は、玉川集落から大里峠方向に500メートル程上った所にある十二山神社の本尊として祀られている。当町には地域柄多くの山の神社があり、『小国の信仰』によればその数は80社を数えるという。当町に所在する山の神社本尊の像形は三面の石像や石斧を持つ物等があるが、ここ玉川の山の神社の場合は、黒、金、青色などの絵の具で仕上げられた烏天狗像である。本像は昭和60年3月彫刻第16号として町の文化財に指定され、その後昭和61年6月には「広報おぐに」で紹介された。その内容を要約すると次の通り。
「昔から山の怪異や山の異人が烏天狗と見られるような話がいくつも残っている。山姥を山の神の女性としての変身の一面とすれば、天狗は、男性の変身であろうと言われている。伝説によると、天狗は高い鼻をした赤い顔をしており、羽翼を持ち自在に飛行できる。これが大天狗で、一方烏天狗を小天狗と呼んでいる。このように、烏天狗は本来の山の神とは少し異なっている。
この山の神社の神像に関する由緒などは伝わっていないが、修験・羽黒信仰の力が表れていると思われる。
この神像は木造で、頭には兜巾(ときん)をかぶり、体には納衣をまとい、鳥の羽を付けた童顔の神像である。羽は差し込みで台座に乗った立像である。像高は21.5cmで厨司(ずし)の中におさめられている。厨司は古い神社の建築様式で、羽黒の三社合祭殿・大聖寺笹の観音堂に見られる形である。」
当地区に所在する町指定文化財は、玉泉寺の聖観世音菩薩像、三平岩屋、大里峠の凶霊供養塔、さらにこの山の神の烏天狗像を加えると4件にものぼり、三平岩屋を除きいずれも旧越後街道沿いにある。